◎布団締め
太鼓台の重(布団屋根)には四面に一対ずつ、合計8枚の睥睨する龍の刺繍が取り付けられている。この布団締めの龍は、左右2体がペアとなった同じパターンの4組み揃い。
この布団締めの2龍は立龍の姿勢をとっており、次のような呼称の説がありる。
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「阿龍・吽龍説」
龍の口形で区別するもので、向かって左側が阿龍、右側を吽龍としているもので、神社の狛犬や寺院の仁王像に見られる二元論に立脚している。 |
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「雄龍・雌龍説」
左側の龍が玉(如意宝珠)を護持し、右側の龍が剣を保持することを拠所としている。向かって左側が雌龍、右側が雄龍。 |
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「昇龍・降龍説」
どちらの龍を昇・降龍とするかの定説はないが、縫師の間では、向かって左側を昇龍、右側を降龍としている。
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「降雨神説」
龍は昇天して龍神となり、農業に必須である降雨をもたらすという龍神信仰、龍神雨乞信仰によるものとされている。
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◎上幕(水引幕)・高欄幕
太鼓台の四本柱の四面上部には上幕、下部(高欄部)には高欄幕、合計8枚の垂幕が掛かっている。幕は金糸による立体刺繍が縫い施されており、新居浜地方の幕は伝承によると四方神具現れとも、大漁豊漁を祈願する漁業や海洋に関する意があると言われている。
現在の刺繍を分類すると、禽獣の幕、御殿の幕、禽獣と御殿の幕、武者絵の幕の四分野に分けられる。
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「禽獣の幕」※四神思想説
通俗的には、獰猛な禽獣が配置されたのは、華美の競い合いや太鼓台同士の威勢の誇示が所以だと言われている。しかし、本来的には動物が神、もしくは神の化身などの性格を具備していることから、四神思想と結びつける説もある。
現在、上幕、高欄幕の主題に用いられているのは、龍、飛龍、鷲、唐獅子、鯉、猿、猫、虎の九種類。
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「御殿の幕」
幕のある御殿の形式は神社建築、寺院建築、城郭建築、中国風宮殿建築など、様々な様式を混合している。
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「武者絵の幕」
文学的に武者絵の幕は、中国神話、中国伝説、中国物語、日本神話、日本伝説、日本史話、謡曲、浄瑠璃、歌舞伎等に題材を求め、庶民に親しまれた題材を採用している。
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